2020年(令和2年)に入ってから新型コロナウィルスが猛威をふるい、今までの生活が大きく変化しました。
防災においても避難所で感染対策がなされていることはもちろん、各家庭でも防災グッズに『感染対策』を備えておく必要があります。
普段から感染対策グッズを備えている方も多いと思いますが、正しいアイテムを備えている自信がある人はどれだけいるでしょうか。
自分や家族の命を守る対策なので「対策しているつもり」ではなく、ぜひ正しい知識で『感染対策×防災』をしましょう。



今回は、医療従事者からみた感染対策をお伝えします。
筆者は医療従事者として10年間以上勤務しており、現在も医療現場で感染対策を実践しています。
感染対策を踏まえた防災グッズ一覧
感染対策を踏まえた防災グッズは以下の通りです。
防災グッズ | 持ち出し | ポーチ | 備蓄品 |
---|---|---|---|
サージカルマスク | ◎ 3~7枚 | ◎ 1~2枚 | ◎ 1家庭1箱 |
フェイスシールド | ◎ 1人1セット | ||
アルコール手指消毒液 | ◎ 携帯用1本 | ◎ 携帯用1本 | ◎ ボトル1本 |
※持ち出し用とポーチは兼用も可 | |||
除菌シート | ◎ 1家庭1つ | ◎ 1家庭1つ | |
非常食 | ◎ 最低3日分 | ◎ 3~7日分 | |
アイマスク・耳栓 | ◎ 1人1つ | ||
体温計 | ◎ 1家庭1つ | ◎ 1家庭1つ | |
※持ち出し用と備蓄品は兼用も可 |
上記のように、感染対策では従来の防災グッズにはないアイテムが必要となります。
感染対策と防災を両立する必要性
令和2年に入ってから新型コロナウィルスが猛威を振るい、半年以上が経った現在(※令和3年9月)でも終息とはいきません。
以下の理由で、従来の防災対策だけでなく『感染対策』との両立が必要になってきます。
- 感染症はなくならない
- 被災時に自宅が無事とは限らない
- 各自治体の避難所も対策をしている
感染症はなくならない
新型コロナウィルスを含め、感染症が完全になくなることはほとんどありません。
例えば、以下の感染症をみてみましょう。
- 結核:紀元前200年ごろ~
- インフルエンザ:1934年~
- SARS:2002年~
- 日本脳炎:1871年~
- 麻疹(はしか):998年~
過去に蔓延した感染症は現在も終息したわけではなく、治療薬やワクチンができたことによって人と共存している状態と言えます。
新型コロナウィルス感染症に関しても同様で、終息ではなく今後『どのように共存するか』を考える必要があります。
被災時に自宅が無事とは限らない
新型コロナウィルスの感染リスクを考えて「災害が起こっても自宅避難」と考える家庭が増えています。
ただし、被災時に自宅が無事とは限りません。
令和2年7月豪雨では全半壊2,328棟を含む18,492棟が住宅被害にあっており、東日本大震災においては全壊128,768棟、半壊245,626棟に至ります。
自宅が被害を受ければ避難所での生活を強いられるため、自宅以外で過ごすための備えも大切になってきます。
各自治体の避難所では感染対策をしている
令和2年4月7日には『避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について』として厚生労働省から、各自治体に通知が送られています。
厚労省からの通知を踏まえて、各自治体の避難所では、感染症と防災の両立を目指して様々な対策がなされています。
- マスク・フェイスシールド着用
- 避難所の衛生環境の確保
- 充分な換気やスペース確保
- パーテーションによる仕切り
- 発熱者用の専用スペース確保
このような対策がなされていますが、個人でも『感染症×防災』の意識をしっかりともって、感染対策をしていく必要があります。
医療者から見た感染対策グッズのポイント
感染対策を踏まえた防災グッズのポイントを医療者目線で解説します。
サージカルマスク
マスクは粉塵やホコリを吸わないように防災の観点でも大切ですが、感染症対策としても必須の防災グッズです。
感染対策としてのマスクの役割は2つ
- 自分の咳や会話中の唾液に含まれるウィルスの飛散を防ぐ
- エアロゾル感染を防ぐ
咳やくしゃみ、会話による唾液の飛散でウィルスが空気中に舞い、水分が蒸発してウィルスだけが空気中に浮遊していることによる感染。感染性を有して、空気中に3時間ほど浮遊するといわれています。
でも、『100均のマスク』やその他の『ウレタン製』といった間違った選び方をしている人もいます。
感染症対策としてのマスクは以下のポイントを抑える必要があります。
- 不織布マスク(使い捨てマスク)
- しっかりフィットして隙間がないもの
- 生産元がはっきりしている国産のマスク
高齢の方に多いのが『布マスク』ですが、布マスクは不織布マスクに比べてフィルター性能が劣ります。
また、100均やその他の安いマスクでは『マスクが薄い』『フィルターが粗い』というように、マスクの効果がほとんどないことも。
マスクは、生産元のはっきりしている国産不織布を使用することで、自分からのウィルス飛散やエアロゾル感染を予防することができます。
おすすめは『耳らくリラマスク』
- メディカルレベルの3層構造フィルター
※0.1㎛まで99.9%カット - 赤ちゃんのおむつにも使用されている素材
- 長時間でも耳が痛くなりにくい
- 経済産業省採択事業者による国産マスク



新型コロナウィルスやインフルエンザウィルスは0.1㎛と言われているため、99.9%のフィルター性能を発揮しますよ。
マスクを2重にするという方法も説としてありますが、マスク同士のズレが生じるためフィット感として有効性に疑問が残ります。
また、TV番組などではマウスガードをみかけますがエアロゾル感染が防げないため、必ずマスクを着用しましょう。
フェイスシールド
飛沫を通して目の粘膜からウィルス感染する可能性もあります。
新型コロナウィルスにおいては、目の粘膜からの感染性は低いとされていますが、被災によりストレスがかかることで免疫機能が低下します。
普段はあまり一般使用されないフェイスシールドも1人1セット備えておくと安心です。
頭にがっちりとホールドするタイプもありますが、眼鏡タイプの方が万が一の時にシールドの交換がすぐできます。
現在、私が医療現場で使用しているのも眼鏡タイプです。
また、木村拓哉さんも眼鏡タイプのシールドを使用されていました。
(※ご本人のインスタグラム写真から)
アルコール手指消毒液
人やものへの接触でウィルスが手につき、その手で食事をしたり目をこすったりすることで感染するリスクがあります。
手に付着したウィルスは、洗い流すことがもっとも有効ですが、被災時は水が入手しづらくなるため飲水や生活用水をなるべく残しておきたいところ。



そこでアルコール手指消毒液が有効です。
エタノール濃度が70~95%のものを使用することで、ウィルスの膜を破壊し、感染リスクを低減することができるとされています。
エタノール濃度60%台のものでも効果があるというデータもあります。
もし、エタノール濃度70%~のものが手に入らなければ、60%台のものでも問題ありません。
除菌シート
避難所生活を余儀なくされた場合、接触による手指からの経口感染のリスクがあります。
もちろん避難所も感染対策がなされていますが、個人としての対策も重要。
除菌シートを1つ持っておくことで、周囲のものやフェイスシールドの表面を拭き、接触による感染を防ぐことができます。
非常食
「感染対策で非常食?」と思うかもしれませんが、感染症は免疫機能が低下することで感染リスクが高まります。
栄養価のある非常食を備えることで、免疫機能を落とすことなく感染リスクを低減することができます。
非常食は、通常の持ち出し用防災セットや備蓄品にも備えます。
もしすでに備えている場合は新しく買い足す必要はありませんが、ローリングストック法を用いれば無駄なく備えられます。
通常の野菜ジュースでは賞味期限が短いですが、長期保存のものであれば約5.5年の保存がききます。



野菜不足を補うために、野菜ジュースも持っておきましょう。
被災時は、精神的な不安や環境ストレスがかかります。
免疫機能が低下しないように栄養補給をすることは大切ですが、好みではないものばかりだと飽きてしまいます。
精神面を考え、自分の好きな食べ物やお菓子を備えておくことも大切です。
アイマスク・耳栓
避難所での生活では周囲に人がいるため、寝ようと思っても人の動きや音が気になります。
また、不安やストレスで興奮状態にあるとしっかりと休むことができません。
睡眠がとれないと免疫機能が低下して感染症のリスクも高まるため、アイマスクと耳栓を1セット備えておきましょう。
体温計
新型コロナウィルスが蔓延し始めてから体温計を備えている家庭は多いと思いますが、持ち出し用防災セットに1つ備えておくと安心です。
除菌シートを持っておけば接触型の体温計でも問題ないですが、除菌シートは物やフェイスシールド用としたいため非接触型の体温計がおすすめ。



非接触型であればこまめに除菌することなく、家族内で使いまわすことも可能です。
家族内で使いまわすといっても、複数人が操作で接触する場合には除菌シートで消毒する必要があります。
非接触体温計を使いまわす場合は、操作する人を限定すると1回ごとに除菌せず使用することができます。
通常の防災セットをベースに感染対策
感染対策はこれからの防災に必要といえますが、基本として『必須の防災グッズを備えてから、必要なモノを付け足す』ことが大切です。
基本の防災グッズはバラバラに買うと高額になってしまうため、市販の防災セットを購入することで効率的かつ比較的安価で備えることができます。



まだ、防災セットを備えていない方は早めに備えましょう。
まとめ
新型コロナウィルスの流行を引き金に、感染症への対策が重要になってきました。
でも、間違った対策をされている方をまだまだ多く見かけます。
TVやSNSでもさまざまな情報がでていますが、間違った情報を得て「対策していたつもり」では、せっかくの備えも意味がなくなってしまいます。
今回は、医療機関で実際に感染対策を実践している現役の医療者として話をしました。
ぜひ正しい情報から正しい対策を取り、『感染対策×防災』を両立して、自分や家族の命を守っていきましょう。